
屋根のリフォームや葺き替えを検討していると、施工店から「ルーフィング」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
ルーフィングとは、屋根材の下に敷かれる防水シートのことです。普段は目に見えない部分ですが、雨水が屋根材をすり抜けた際の最後の防水ラインとして、住宅を守る非常に重要な役割を担っています。ルーフィングの品質や種類を誤ると、耐久性の低下や雨漏りリスクの上昇につながる恐れがあります。業者任せにせず、基本的な知識を持っておくことが納得のいくリフォームへの第一歩です。
この記事では、ルーフィングの基礎知識から種類・性能の違い・選び方まで詳しく解説します。
目次
1. ルーフィングとは?
1-1. ルーフィングの役割

ルーフィングとは、屋根材の下に敷く防水シート(下葺き材)のことです。瓦・スレート・金属屋根などの屋根材と、野地板(屋根の下地合板)の間に張られます。
瓦やスレートなどの屋根材は、構造上どうしても隙間が生じます。強風や激しい雨の際には、屋根材の下に雨水が侵入することがあります。そのときに、侵入した雨水を屋根内部(野地板・垂木・梁など)に到達させず、軒先へ流し出す役割を果たすのがルーフィングです。
つまり、屋根材が「一次防水」、ルーフィングが「二次防水(最後の砦)」という2段構えで、住まいを雨漏りから守っています。施工後は屋根材に覆われて見えなくなるため注目されにくいですが、その重要性は屋根材と同等、あるいはそれ以上といわれています。
1-2. ルーフィングが劣化するとどうなるか
ルーフィングは適切なグレードのものを選べば長期間の防水性能を維持できる建材ですが、劣化が進むとさまざまな問題が生じます。
・雨漏り発生: ルーフィングが破れたり亀裂が入ったりすることで、浸入した雨水が野地板や構造材に達する
・野地板・垂木・梁の腐食: 雨水が継続的に浸入することで、木材が腐食し建物の耐久性が低下する
・カビ・シロアリの発生: 湿気が籠ることでカビが発生したり、シロアリが寄ってきたりする
特に怖いのは、劣化が外から目視確認できないという点です。屋根材がまだきれいな状態でも、内側のルーフィングがすでに劣化している可能性があります。築15〜20年を超えたお住まいで屋根リフォームを行う際は、業者に「既存ルーフィングの状態確認」を依頼し、劣化が見られた場合は同時に交換してもらうことをおすすめします。
2. ルーフィングの種類と特徴を紹介
ルーフィングと一口に言っても、素材・性能・価格はさまざまです。まず以下の比較表で全体像を把握してから、各種類の詳細をご確認ください。
種類の比較まとめ
▼ 素材による分類
| 種類 | 耐久性の傾向 | 初期費用の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| アスファルトルーフィング940 | 低め(約10年程度) | ★☆☆☆☆ | 新築・葺き替え |
| 改質アスファルトルーフィング | 高め(約20〜30年程度) | ★★☆☆☆ | 新築・葺き替え・カバー工法 |
| 透湿防水ルーフィング | 高め(製品によるが約50年相当) | ★★★★★ | 新築・高気密高断熱住宅 |
| 遮熱ルーフィング | 製品によって変わる | ★★★☆☆〜★★★★☆ | 通気工法採用・夏の暑さ対策重視 |
▼ 仕様による分類(上記と組み合わせで選択)
| 仕様 | 耐久性の傾向 | 初期費用の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 粘着層付き | ベース素材に準じる | ★★★☆☆〜★★★★☆ | カバー工法(ノンアスベスト屋根) |
| 不織布ルーフィング | 紙基材より高め | ★★☆☆☆〜★★★☆☆ | 新築・葺き替え・カバー工法全般 |
2-1. アスファルトルーフィング
アスファルトルーフィングは、原紙にアスファルトを浸透・被覆させた最もスタンダードなルーフィングです。「アスファルトルーフィング940」という1㎡あたり940gのルーフィングが最低グレード品として広く流通しています。
品確法という法律により、雨漏りは10年保証が義務付けられるようになり、最低限10年程度は持つアスファルトルーフィングが普及するようになりました。
メリット
・最もリーズナブルで入手しやすい
・対応できる業者が多い
デメリット・注意点
・アスファルトが温度変化に弱く、夏の高温で軟化・冬の低温で硬化を繰り返すため劣化が進みやすい
・耐久性が低い傾向があり、長期使用を前提としたリフォームには向かない
【Topic】「ルーフィング940」が建売住宅に多い理由
建売住宅やローコスト住宅、新築住宅では、コスト削減のため最低グレードのルーフィング940が採用されるケースが多いといわれています。
新築の場合特に、屋根の劣化より早くルーフィングが劣化してしまうこともあります。
その場合は、屋根を一度撤去し、ルーフィングを貼り直すという作業が必要になり、メンテンス費用がかさんでしまうため、ルーフィングの種類には注意が必要です。
2-2. 改質アスファルトルーフィング

改質アスファルトルーフィングは、アスファルトにゴムや合成樹脂を混合することで、温度変化への耐性と耐久性を大幅に向上させたルーフィングです。業界団体(JWMA)が定めた品質基準に対応した製品が多いです。
メリット
・アスファルトルーフィングと比べて耐久性が大幅に向上
・釘穴まわりからの雨水侵入に強く、雨漏りリスクが低下
・グレードを上げても工事費全体への影響は小さい
デメリット
・アスファルトルーフィング940より価格が上がる(ただし差は小さい)
【Topic】名前が似ているので要注意:「改質」の有無で性能に大きな差がある
「アスファルトルーフィング」と「改質アスファルトルーフィング」は名前が似ていますが、耐久性には大きな差があります。ルーフィングの種類を確認する際は、「改質」の文字が入っているかをチェックしましょう。さらに、シート部分の基材に合成繊維の不織布を使用した製品を選ぶと、紙基材と比べて引き裂き強度や寸法安定性が高まり、耐久性がより向上します。詳しくは2-6「不織布ルーフィング」をご参照ください。
2-3. 透湿防水ルーフィング
透湿防水ルーフィングは、防水性能を保ちながら、屋根内部にこもった湿気(水蒸気)を外に逃がすことができるルーフィングです。ポリエチレンなどの高分子素材を主原料とするものが代表的で、アスファルト系に比べて軽量なのも特徴です。
メリット
・屋根内部の湿気を外に排出し、野地板・構造材の腐食を防ぐことができる
・高気密高断熱住宅や木造住宅の長寿命化に貢献する
・比較的軽量でアスファルト系より屋根への負担が少ない
デメリット・注意点
・透湿機能を発揮するには、屋根内部に通気層を設ける「通気工法」が必要な場合がある
・通気工法に対応した屋根材が限られる
・初期コストがアスファルト系より高く、対応業者も少ない
2-4. 遮熱ルーフィング
遮熱ルーフィングは、アルミニウム等の反射層を設けて太陽の熱を反射・遮断する機能を持ったルーフィングです。夏場の室内温度上昇を抑え、冷房負荷の低減にも寄与するとされます。透湿機能と組み合わせた「遮熱透湿ルーフィング」もあります。
メリット
・夏の屋根裏温度上昇を抑制し、住宅の快適性が高まる効果が期待できる
・透湿機能付きの場合、木材の湿気劣化も同時に防ぐ
デメリット・注意点
・屋根材とルーフィングの間に空気の層(通気層)がある構造でなければ、遮熱効果が発揮されない
・スレート屋根のように屋根材とルーフィングが密着する構造では効果が限定的になる場合がある
・実際の効果は屋根材・通気層・小屋裏換気・断熱材などとの組み合わせで変わるため、採用前に業者へ相性を確認したほうがよい
2-5. 粘着層付きルーフィング
粘着層付きルーフィングは、裏面に粘着剤が設けられており、釘やタッカーを使わず貼り付けられるタイプです。改質アスファルトを使用したものが主流です。
メリット
・釘やタッカーを使わないため、穴開けによる防水性低下がない
・屋根材との密着性が高く、防水性能が向上する
・ノンアスベストスレートへのカバー工法に最適(釘を打つとスレートが割れる場合があるため)
デメリット・注意点
・高温時に粘着剤が軟化しやすい製品もあるため、屋根材・地域条件に応じた製品選定が必要
【Topic】カバー工法を検討中の方へ:アスベスト含有の確認が必要な場合があります
既存の屋根材にアスベストが含まれているかどうかによって、適切な工法が変わる場合があります。工事前に業者へ屋根材の状態を調査してもらい、適切な工法の提案を受けるようにしましょう。なお、一定規模以上の改修工事では、アスベストの事前調査と結果報告が法律で義務付けられています。
2-6. 不織布ルーフィング
不織布ルーフィングは、シート部分の基材に合成繊維の不織布を使用したタイプです。アスファルト系・高分子系どちらにも不織布タイプの製品があります。製品ごとの差はあるため一概には言えませんが、一般的に従来の紙基材と比べて引き裂き強度や寸法安定性が高く、施工中に踏んでも傷みにくいのが特徴です。近年リフォーム市場でも採用が増えてきているタイプです。
メリット
・一般的に紙素材よりも強靭で破れにくい
・施工中に踏んでも破損しにくい
・改質アスファルトと組み合わせることで高い総合性能を発揮する
デメリット
・紙タイプのルーフィングと比べるとやや高価
3. ルーフィングの選び方・注意点
3-1. 費用と耐久性のバランスを考える
ルーフィングを選ぶ際に多くの方が迷うのが「コスト」です。グレードの高いルーフィングは価格が上がりますが、グレードを上げても工事費全体への影響はごく小さいのが実態です。最低グレード(ルーフィング940)から改質アスファルトルーフィングへグレードアップしても、工事費全体の差額は小さく収まるケースが多いとされています。
一方で、耐久性の差は大きく、グレードが低いルーフィングを選んだ結果、屋根材がまだ使えるのにルーフィングの劣化が原因で早期に葺き替えを迫られるケースもあります。長期的なコストを考えれば、最初から耐久性の高いルーフィングを選ぶほうが合理的なことがほとんどです。
屋根材の種類に応じた推奨グレードの目安を以下にまとめます。
| 屋根材の種類 | 屋根材の想定使用期間目安 | 推奨ルーフィングのグレード |
|---|---|---|
| スレート(コロニアル系) | 20〜30年程度 | 改質アスファルトルーフィング以上 |
| ガルバリウム鋼板 | 30〜40年程度 | 不織布基材の改質アスファルト以上 |
| 瓦(陶器) | 50年以上 | 透湿防水ルーフィングなど高耐久品 |
※屋根材の想定使用期間は製品・施工・環境条件により異なります。詳細は専門業者にご確認ください。
3-2. 施工業者にどんなルーフィングを使うか確認する
ルーフィングは施工後に屋根材で完全に隠れてしまい、完工後に品質を確認する方法はありません。だからこそ、見積もり段階でしっかり確認しておくことが大切です。
業者への確認ポイント
・見積書にルーフィングの商品名・品番が記載されているか? → 「ルーフィング工事一式」のみの記載は要注意。品番が明記されていない場合は具体的に確認しましょう。
・耐用年数が適切なルーフィングが使用されるか? → 「ルーフィングの耐用年数は何年ですか?」と一言確認するだけで、業者の品質意識を見極める目安になります。
・カバー工法の場合、既存屋根材のアスベスト含有確認はされているか? → 屋根材の状態によって適切な工法が変わります。事前に調査を依頼しましょう。
複数社に見積もりを依頼し、使用するルーフィングの品番・グレードを揃えた上で価格を比較することが、適正な工事を選ぶための近道です。
業者選びでお困りの方はこちらの記事をお読みください
4. よくある疑問(FAQ)
種類の説明を読んで「もう少し詳しく知りたい」と感じた方向けに、疑問になりやすいポイントをまとめました。
Q:カタログに「30年相当」「50年相当」と書かれていますが、本当にその年数もちますか?
A.これらの数値は通常、促進劣化試験(加熱処理などの試験条件下での耐久性評価)の結果をもとにした区分であり、実際の建物でその年数の寿命を保証するものではありません。実際の耐用性は施工条件・通気計画・地域環境などによって変わります。カタログの数値はあくまで比較の目安として参考にしつつ、自宅の屋根形状や断熱仕様に合うかを業者に確認することが大切です。
Q:遮熱ルーフィングにすれば、夏の暑さはかなり改善しますか?
A.遮熱ルーフィング単体で室内環境が大きく変わると断定するのは難しいところです。実際の効果は、屋根材・通気層・小屋裏換気・断熱材など、屋根全体の構成との組み合わせによって変わります。「遮熱ルーフィングを入れるだけで涼しくなる」というよりも、屋根全体の温熱計画の一部として考えるのが適切です。採用を検討する際は、屋根材との相性も含めて業者に確認しましょう。
Q:ルーフィングだけの工事はできますか?
A.基本的には不可能です。ルーフィングは屋根材の下にあるので、屋根の一度撤去して葺きなおすの工事とセットになります。
金額を抑えたい場合は、既存の屋根の上から新しいルーフィングと屋根を設置する「カバー工法」をすることで比較的費用を抑えつつ、防水性を高めることもできます。
ただし、既存の屋根材やルーフィングの劣化が激しい場合はカバー工法を出来ないので、業者としっかり打合せすることが大事です。
Q:DIYでルーフィングを張ることはできますか?
A.可能ではありますが、施工の知識・防水処理技術が必要です。きちんとした施工でないとルーフィングの機能が発揮されないため、専門業者に依頼することをお勧めします。
5. まとめ
ルーフィング(防水シート)は、屋根材の下に敷かれる「住宅の雨漏りを防ぐ最後の砦」ともいえる重要な建材です。普段は目に見えない分、選定や品質管理が業者任せになりがちですが、施工後に確認する術はありません。
この記事の要点を以下にまとめます。
・ルーフィングは屋根の二次防水として、雨漏りを防ぐ最も重要な役割を担っている
・最低グレードのルーフィング940は耐久性が低い傾向があり、長期的なコスパには疑問がある
・改質アスファルトルーフィング(ARK-04s対応品)以上を選ぶのが業界団体の推奨
・カタログの年数表示は試験条件下の数値であり、実際の寿命の保証ではない
・見積書には必ずルーフィングの商品名・品番が記載されているか確認すること
屋根リフォームを検討している場合、まずは専門業者に現地調査と見積もりを依頼し、ルーフィングの種類についても詳しく相談してみましょう。複数の業者から見積もりを取り、使用するルーフィングのグレードや価格の違いを比較検討することが、納得のいく工事への近道です。


